飲食・流通の現場で感じた課題や気づきを記録するノート

KURU フィールドノートは、
飲食店の仕入れや流通の現場で実際に起きていることを、
立場を決めつけず、構造として記録するためのノートです。
特定のサービスを紹介することを目的とせず、
現場で感じた違和感や問いを、そのまま残しています。
  • B2Bの現場で、
    ずっと当たり前のように存在してきたものがあります。

    それが「未回収リスク」です。

    支払い方法はバラバラ。
    ある取引先は月末締め翌月末払い。
    あるところは週締め。
    あるところは10日単位。

    請求書は、
    本部に送ったり、現場に送ったり、
    「届いていない」「無くした」「もう一度送ってほしい」。

    正直、珍しい話ではありません。

    問題は、
    この“当たり前”を処理するために、どれだけの人と時間が使われているかです。

    期限内に支払われない取引先は、
    体感で3割ほど。

    そのたびに
    ・電話をかけ
    ・確認をし
    ・再請求をして
    ・場合によっては回収に行く

    当然、人が必要になります。
    その人件費は、どこへ行くか。

    最終的には、
    商品価格に上乗せされるしかありません。

    つまり、

    未回収リスク

    人件費増加

    コスト上昇

    価格転嫁

    この循環が、ずっと続いてきました。


    不思議なのは、
    私たちの周りではすでに電子決済が当たり前になっていることです。

    B2Cでは、
    カード決済が使えない店は選ばれなくなりました。

    でもB2Bでは、
    「手数料が高いから」
    「業界的に無理だから」
    という理由で、導入されないままです。

    確かに、3%は軽くありません。
    利益率の低い業界ほど、重い数字です。

    ただ最近、現場では少しずつ変化も見え始めています。

    「これからはカード決済でお願いしたい」
    「対応できないなら、取引を見直したい」

    まだ少数派です。
    でも、飲食店のカード決済も最初は同じでした。

    未回収リスクを
    “現場の努力”で解決し続けるのか、
    “構造”として減らしていくのか。

    今、ちょうどその分岐点に来ているように感じています。

  • 個人向けの決済は、
    ここ数年で一気に電子化が進みました。

    クレジットカード、
    QRコード決済、
    非接触決済。

    現金を使わなくても、
    ほとんど困らない環境が
    すでに整っています。

    一方で、
    B2Bの取引はどうでしょうか。


    B2Bでは、今も請求書と振込が前提

    卸取引や業務用の取引では、
    今でも

    ・請求書を発行し
    ・銀行振込で支払う

    という流れが
    当たり前のように続いています。

    FAXや電話が残る現場では、
    この形が
    長年「普通」として
    受け入れられてきました。


    電子決済が進まない理由は、技術ではない

    ここで誤解されがちなのは、
    「B2BはIT化が遅れているから」
    という見方です。

    しかし実際には、
    技術的な問題は
    ほとんど存在しません。

    システムはあります。
    サービスもあります。

    それでも進まない。

    理由は、
    構造の問題にあります。


    最大の壁は、決済手数料

    B2B取引では、
    取引金額が大きく、
    利益率は低いケースが多くあります。

    その中で、
    クレジットカードなどの
    電子決済を導入すると、
    約3%前後の手数料が発生します。

    この3%は、
    B2Bの現場では
    非常に重い数字です。

    ・すでに薄い利益
    ・価格競争
    ・原価高

    こうした状況の中で、
    簡単に吸収できるコストではありません。


    「便利さ」と「負担」が一致しない

    電子決済を導入すれば、

    ・集金リスクは減る
    ・事務作業は楽になる
    ・未回収の不安も減る

    理屈では、
    メリットは明確です。

    しかし、
    その便利さの対価として、
    毎回確実に発生する手数料を
    誰が負担するのか。

    この点で、
    多くの現場は
    立ち止まってしまいます。


    支払う側も、受け取る側も余裕がない

    電子決済が進まないのは、
    どちらか一方が
    抵抗しているからではありません。

    支払う側も、
    受け取る側も、
    余裕がない。

    ・飲食店は利益が残らない
    ・卸業者は回収コストを抱えている

    その中で、
    新たな固定費や手数料を
    受け入れる判断が
    難しくなっています。


    だから、人が間に入り続ける

    結果として、
    人が間に入る構造が
    温存されます。

    ・請求書の確認
    ・入金チェック
    ・未回収の連絡
    ・再請求

    本来、
    仕組みで処理できる部分を、
    今も人が支えています。

    これは非効率ですが、
    現状では
    最も現実的な選択肢でもあります。


    電子化が進まないのは、合理的な結果でもある

    B2B決済が電子化されない現実は、
    怠慢や遅れの結果ではありません。

    低い利益率、
    分断された取引構造、
    手数料前提の決済モデル。

    これらを前提にすると、
    今の形は
    ある意味、合理的な結果とも言えます。


    本当に必要なのは、決済だけの話ではない

    重要なのは、
    決済を電子化すること自体ではありません。

    ・取引情報が整理され
    ・流れが一つになり
    ・人が介在しなくても回る

    そうした構造があって、
    初めて決済の電子化が
    意味を持ちます。

    決済だけを切り出しても、
    現場は楽になりません。

  • 卸業者の現場で、
    最も消耗する業務の一つが
    集金です。

    商品を届けることよりも、
    請求書を出すことよりも、
    実はその後の「回収」に
    多くの手間と時間が使われています。


    支払い方法が、そもそも統一されていない

    現場で起きているのは、
    非常にバラバラな支払いルールです。

    ・ある店は、請求書を本部に送る
    ・ある店は、現場に送る
    ・「届いていないから再送してほしい」と言われる
    ・請求書自体を紛失しているケースもある

    これだけでも、
    事務作業は一気に増えます。


    回収サイクルも、店ごとに違う

    さらに厄介なのが、
    回収のタイミングが統一されていないことです。

    ・毎日集金
    ・週に一度
    ・10日締め
    ・月末締め

    同じ卸業者が、
    複数のサイクルを同時に回すことになります。

    これは、
    仕組みではなく
    人が調整し続ける前提の構造です。


    期限内に支払われない現実

    現場感覚として、
    約30%の取引先は、
    期限内に入金されません。

    悪意があるとは限りません。

    ・忙しくて後回し
    ・確認が遅れた
    ・本部承認が止まっている

    理由は様々ですが、
    結果として、
    再確認・再訪問・再連絡が必要になります。

    そのたびに、
    人が動きます。


    集金コストは、最終的に価格に転嫁される

    人が動くということは、
    コストが発生しているということです。

    ・確認の電話
    ・訪問
    ・経理処理
    ・管理工数

    これらは、
    目に見えにくいですが、
    確実に積み上がっています。

    そしてそのコストは、
    最終的に
    商品価格に転嫁されていくことになります。

    集金の問題は、
    業者だけの問題ではなく、
    市場全体のコスト構造に
    影響を与えています。


    なぜB2Bでは、電子決済が進まないのか

    個人向けの世界では、
    キャッシュレス決済は
    すでに当たり前になっています。

    一方、
    B2Bの取引では、
    今でも

    ・請求書
    ・銀行振込

    が前提のままです。

    理由の一つは、
    決済手数料です。

    カード決済などを導入すると、
    約3%前後の手数料が発生します。

    利益率の低い取引では、
    この3%は
    簡単に吸収できる数字ではありません。


    導入したくても、導入できない構造

    電子決済を使えば、
    回収リスクは減ります。

    事務負担も軽くなります。

    それでも、
    手数料が重くのしかかり、
    結局は
    従来のやり方に戻らざるを得ない。

    この状況は、
    意識や努力の問題ではなく、
    構造の問題です。


    集金は、業務ではなく構造の副作用だ

    卸業者が集金に追われるのは、
    能力が低いからでも、
    管理が甘いからでもありません。

    支払い方法が分断され、
    ルールが統一されず、
    人が間に入る前提で
    回っている構造の中にいるからです。

    集金は、
    本来の業務ではなく、
    この構造が生み出した副作用に近いものです。

  • 取引先が500、1000と増えていく。
    それ自体は、悪いことじゃない。

    問題は、その中身だ。

    注文は電話、FAX、LINE、メール。
    形式はバラバラ。
    内容もバラバラ。

    そしてそのすべてを、
    人が、目で見て、判断して、入力している。


    「この注文、誰が分かるんだ?」

    例えば、
    「生1」という注文。

    これが何を意味するのかは、
    その店をよく知っている人間にしか分からない。

    生ビールなのか。
    生肉なのか。
    どの規格なのか。

    結局、
    その店を“覚えている人”しか処理できない。

    つまり、
    システムじゃなくて「人の記憶」に依存している。


    入力できたとしても、終わりじゃない

    仮に入力できたとしても、
    そこで終わりじゃない。

    実際の納品では、こうなる。

    ・三枚肉1kg → 切ったら1.1kg
    ・箱指定 → 実際はバラ
    ・数量調整がその場で発生する

    その瞬間、
    また修正が必要になる。

    しかもそれを、
    朝の出発前の限られた時間でやる。

    一度入力した内容を、
    もう一度ひっくり返す。

    正直、正気の作業量じゃない。


    だから「人を入れる」しかなくなる

    この量を、
    このスピードで、
    この精度で回そうとしたら――

    もう、人を増やすしかない。

    でも、人を入れれば入れるほど、
    教育が必要になり、
    ミスが増え、
    確認が増え、
    管理が増える。

    結果、
    人を入れるほど現場は重くなる。


    それでも止められない理由

    なぜ止められないのか。

    理由は単純だ。

    明日も納品があるから。

    今日止めたら、
    明日が回らない。

    だから、
    多少おかしいと思っても、
    無理をしながら回し続ける。


    そして、誰も悪くない

    ここが一番大事なところだ。

    これは誰かが怠けているからでも、
    能力が足りないからでもない。

    構造が、そうさせている。

    アナログな発注。
    人に依存した判断。
    分断された情報。

    その上に「スピード」だけが求められている。

    そりゃ、疲れる。


    だから思う

    業者に必要なのは、
    「もっと頑張ること」じゃない。

    「全部を変えること」でもない。

    今の流れを止めずに、
    人がやらなくていい部分だけを
    静かに肩代わりしてくれる仕組み。

    それがなければ、
    この業界は、ずっと同じ場所を回り続ける。


    このカテゴリーで書いていくこと

    ここでは、
    卸・業者の現場で起きていることを、
    美化せず、そのまま書いていく。

    誰が悪いかではなく、
    なぜそうなっているのか。

    その構造を、言葉にしていく。

  • 飲食店を運営していると、
    一日のほとんどは「処理」で埋まっていきます。

    お客様に対応し、
    スタッフを動かし、
    キッチンとホールを行き来し、
    問題が起きればその場で判断する。

    店が回っているという事実そのものが、
    「自分たちは管理できている」という感覚を生みます。

    しかし、その感覚は、
    多くの場合、錯覚に近いものです。


    忙しい店ほど、管理は後回しになる

    「管理」という言葉は、
    多くの場合、
    すぐに売上につながる行為ではありません。

    ・原価を見直すこと
    ・発注内容を整理すること
    ・予約の流れを構造として把握すること

    これらはすべて、
    「時間ができたらやろう」という位置づけになります。

    問題は、
    飲食店にはその「時間」が
    ほとんど存在しないという点です。

    忙しければ忙しいほど、
    管理は常に後回しにされていきます。


    その結果、管理は「記憶」と「感覚」に委ねられる

    管理すべき項目は増え続ける一方で、
    整理する余裕はありません。

    その結果、
    管理は仕組みではなく、
    人の記憶や感覚に依存するようになります。

    ・この食材は、だいたいこのくらい使ったはず
    ・予約はいつもこのやり方で回っている
    ・発注は昨日と同じ感覚で入れておけば問題ない

    こうした判断は、
    短期的には大きな問題を起こしません。

    だからこそ、
    気づきにくいのです。


    問題が表に出て、初めて管理が意識される

    ロスが増えたとき、
    原価が合わなくなったとき、
    予約が崩れたとき、
    人が限界を迎えたとき。

    その段階になって、
    初めて
    「どこでズレたのか」という問いが生まれます。

    しかしこの時点では、
    すでにそれは
    管理の問題ではなく、
    結果として現れた問題になっています。


    なぜ管理できているように見えてしまうのか

    飲食店の現場は、
    常に動き続けています。

    判断し、対応し、決断する場面が
    一日中続きます。

    だからこそ、
    「管理している」という錯覚に
    陥りやすいのです。

    しかし実際には、

    ・情報は分散し
    ・記録は残らず
    ・判断は特定の人に依存している

    この状態は、
    管理ではなく、
    現場を必死に回している状態に近いと言えます。


    問題は、意欲や努力ではない

    ここで強調したいのは、
    これは意欲や真面目さの問題ではない、
    という点です。

    飲食店は、
    すでに十分すぎるほど多くの仕事を抱えています。

    問題は、
    これだけの業務をこなしながら、
    同時に管理まで求められる構造そのものが、
    あまりにも過酷だということです。


    管理すべきなのは、人ではなく構造だ

    人を増やしても、
    管理が改善されるとは限りません。

    経験者一人に
    すべてを任せても、
    問題は解決しません。

    管理されるべきなのは、
    人ではなく構造です。

    情報が集まり、
    流れが見え、
    判断が個人の頭の中ではなく、
    環境の中で行われる。

    その状態になって、
    初めて「管理」と呼べるものが
    成立します。


    だから現場は、少しずつ疲弊していく

    管理しているつもりのまま、
    現場は今日も回ります。

    回り続けますが、
    確実に疲れていきます。

    この疲労は、
    ある日突然起きるトラブルではなく、
    静かに蓄積していく
    構造的な疲れです。

    そしてその疲れは、
    予約の問題へ、
    発注の問題へ、
    業者との摩擦へと、
    形を変えて表に出てきます。

  • 実際の店舗で起きていること

    少し具体的な例を挙げます。

    自分の店では、
    いくつかの有名なグルメサイトを利用しています。

    それぞれに、
    月額で約10万円前後の
    予約関連費用を支払っています。

    さらに、
    予約管理アプリ経由で入ってくる予約については、
    その分の費用が
    別途発生します。

    つまり、

    ・グルメサイトへの予約手数料
    ・予約管理アプリの利用料

    これらが
    二重に重なっていく構造です。


    利益率の低い業態にとっての現実

    飲食店の利益率は、
    決して高くありません。

    多くの店では、
    最終的に残るのは
    売上の10〜20%程度です。

    その中で、

    ・仕入れ
    ・人件費
    ・家賃
    ・光熱費

    を支払いながら、
    さらに毎月、
    予約関連の固定費が積み重なっていく。

    冷静に考えると、
    これは決して軽い負担ではありません。


    便利さが、そのまま「圧迫」になる瞬間

    もちろん、
    グルメサイトや予約アプリが
    価値を提供していることは理解しています。

    集客の効果も、
    一定程度はあります。

    ただ、
    それらを使えば使うほど、
    固定費が増え、
    選択肢が減っていく。

    結果として、
    「使わないと怖いが、
    使うほど苦しくなる」
    という状態に陥ります。

    20%も残らない業態にとって、
    この構造は
    便利さというより、
    圧力として感じられることが多い

    それが、
    現場で正直に感じていることです。


    問題は、誰かが悪いことではない

    ここで強調したいのは、
    誰かを責めたいわけではない、
    という点です。

    グルメサイトも、
    予約アプリも、
    それぞれが
    ビジネスとして合理的に動いています。

    ただ、
    その合理性が重なった結果、
    最も余裕のない飲食店に
    負担が集中している。

    この構造自体が、
    今の業界の現実だと思います。


    だから、期待してしまう

    もし、

    ・複数の予約チャネルが
     一つに整理され
    ・余計な二重コストが発生せず
    ・現場が「管理」に追われなくて済む

    そんな形が実現できるなら、
    飲食店は
    もっと本質的な仕事に
    集中できるはずです。

    この期待は、
    理想論というより、
    現場から自然に出てきた願いです。

  • 飲食店で働くとき、
    最も優先されるのは、やはりお客様です。

    目の前のお客様に集中すること。
    売上をつくること。
    それが基本であり、最優先事項です。

    ただ、それだけでは終わりません。


    飲食店の現場には、同時に多くの責任がある

    売上を上げるためには、
    味のブレを管理しなければならない。

    どの作業を、
    どのようにスタッフに教えれば
    売上につながるのかを考え、
    教育も行う必要があります。

    現場は常に忙しく、
    火と刃物がある環境です。
    安全管理も欠かせません。

    その一方で、
    経理、在庫管理、仕入れ管理といった
    裏側の業務も存在しています。


    飲食店の在庫は「待ってくれない」

    飲食店の在庫は、
    工業製品とは違います。

    時間が経てば、
    そのまま価値が下がり、
    最終的には廃棄になります。

    管理を誤れば、
    すべてがロスになります。

    鮮度を維持できなければ、
    料理として成立しません。

    それでも、
    コスト管理は厳しく求められます。


    これだけのことを、本当に同時に管理できるのか

    冷静に考えてみると、
    これだけ多くのことを処理しながら、
    細かなコスト管理まで
    完璧に行うのは、
    現実的にはかなり難しいと思います。

    決して、
    飲食店が怠けているわけではありません。

    むしろ、
    忙しすぎるからこそ、
    「後でやろう」が積み重なっていく。

    そして気づいたときには、
    管理は感覚や記憶に頼ったものになってしまいます。


    だからこそ、DXが必要だと感じた

    この現実を前にして、
    必要なのは根性や努力ではなく、
    環境だと感じるようになりました。

    仕入れたものが自動で整理され、
    数字として可視化される。

    どこをどう見直せば、
    仕入れコストを抑えられるのかが分かる。

    その情報が自動でExcel化され、
    会計士にそのまま渡せる。

    もし、
    そうした環境が最初から整っていれば、
    管理は「負担」ではなくなります。


    飲食店が本当に向き合うべきもの

    飲食店は、
    人を相手にする仕事です。

    大きな喜びを感じる瞬間と、
    大きな挫折を感じる瞬間が、
    同時に存在します。

    だからこそ、
    本来注ぐべきエネルギーは、

    ・お客様への対応
    ・料理やサービスの質の管理

    に向けられるべきだと思っています。

    それ以外の部分は、
    できる限りDXによって支えられるべきです。


    それが、結果として店を強くする

    管理が整うことで、
    現場に余裕が生まれます。

    余裕は、
    サービスの質に反映され、
    お客様満足につながります。

    そして、
    リピーターが生まれ、
    結果として
    「続く店」「強い店」になっていく。

    そうした循環をつくることが、
    飲食店にとって
    一番の近道だと考えています。

  • 最初から、
    卸業者の現場を理解しようと思っていたわけではありません。

    出発点は、
    あくまで飲食店側の問題でした。

    飲食店の仕入れや発注の非効率をどうにかしたくて、
    その解決策として、KURUマートという仕組みを作りました。

    その過程で、
    自然と卸業者との接点が増えていきました。
    現在は、27社の業者と日常的に一緒に仕事をしています。

    そこで初めて、
    業者側が抱えている現実を、
    現場レベルで見ることになりました。


    業者の仕事は、想像以上にアナログだった

    多くの飲食店では、
    いまだに発注が手書きで行われています。

    電話、FAX、LINE。
    形式はバラバラで、
    それらが一日に何十件も届く。

    業者側では、
    その注文内容を短時間で読み取り、
    自社の基幹システムへ
    人の手で一件ずつ入力しています。

    当然、
    この作業には人件費がかかります。

    そのコストは、
    最終的に価格という形で、
    飲食店側へ転嫁されていきます。

    アナログが原因で生まれた負担が、
    別の場所でまた負担として戻ってくる。
    そんな悪循環が、
    当たり前のように存在していました。


    曖昧な注文が、現場をさらに疲弊させる

    発注内容の曖昧さも、
    業者にとっては大きな問題です。

    たとえば
    「生1」という注文。

    それが何を意味するのかは、
    その店をよく知っている人にしか分かりません。

    「コーラ1」という注文も同じです。
    1本なのか、1ケースなのか、1箱なのか。
    判断できないまま、とりあえず持っていく。

    違っていれば、
    その場で返品し、
    再配送を行う。

    こうした無駄な往復が、
    日常的に発生しています。


    業者は、店にも振り回されている

    業者と飲食店の関係は、
    理想的な対等関係とは言えません。

    実際には、
    強い立場にあるのは飲食店側です。

    価格交渉、
    急な変更、
    支払いの遅れ。

    集金の問題は、
    業者にとって常に大きなリスクとして存在しています。

    それでも業者は、
    営業、集金、顧客管理、配送、事務処理まで、
    すべてを自分たちで抱え込んでいます。


    だから見えてきたこと

    こうした現場を見て、
    はっきり分かったことがあります。

    卸業者が非効率なのではありません。
    アナログな情報、
    曖昧な発注、
    分断された業務構造が、
    生産性を大きく下げているだけです。

    もし、

    ・正確な発注情報が
     最初から電子で届き
    ・営業や集金、顧客管理から
     業者が距離を取れる仕組みがあり
    ・物流と情報が
     一つの流れとして整理されるなら

    業者は、
    本来やるべき仕事に集中できます。

    KURUマートの構造は、
    そのために生まれました。

    業者が参加することで、
    アナログな発注処理から解放され、
    無駄なコストが減り、
    結果として飲食店にもメリットが戻る。

    これは、
    どちらかが得をする仕組みではなく、
    双方が疲弊しないための構造だと考えています。


    このカテゴリーについて

    このカテゴリーでは、
    卸業者の現場で起きている問題を、
    個別の善悪ではなく、
    構造として整理していきます。

    最初に森を描き、
    次に木を一本ずつ見ていく。

    次回は、
    卸業者にとって特に大きな課題である
    「集金」の問題について、
    現場の現実から掘り下げていきます。

  • 仕入れの話をすると、
    よく「もっと安い業者を探せばいい」と言われます。

    でも、実際に店を運営してみると、
    その言葉がどれだけ現実とズレているかが分かります。

    問題は、
    「安いか高いか」以前に、
    比較そのものができない構造にありました。


    情報がないわけではない。

    ただ、「一次情報」で止まっている。

    業界には、インフォマートのような
    非常に優れたプラットフォームがあります。

    店舗側から見ても、

    ・取引先を探せる
    ・仕入れ履歴を確認できる
    ・仕入れリストをExcelでダウンロードできる

    これらは、間違いなく大きな進歩です。
    自分自身も、非常に革新的だと感じています。

    ただ、それはあくまで
    **「一次的な情報整理」**に留まっています。

    例えるなら、
    デーティングアプリのようなものです。

    1対1で相手とマッチングする。
    連絡先を交換する。

    それ自体は便利ですが、
    本当に知りたいのは、

    ・市場全体ではどうなのか
    ・選択肢は他にどれくらいあるのか
    ・相場として妥当なのか

    という、俯瞰した情報です。


    本当に必要なのは、「集約」と「分析」

    飲食店が本当に欲しいのは、

    ・業者を横並びで比較できること
    ・情報形式が統一されていること
    ・価格や条件が時点ごとに把握できること

    つまり、
    バラバラに存在する情報を、
    一箇所に集めて、自動的に分析する仕組み
    です。

    個別に連絡を取って、
    個別に納品書を見て、
    個別に判断する。

    このやり方のままでは、
    比較は「作業」になり、
    やがて誰もやらなくなります。


    なぜ、比較できない構造が続いてきたのか

    個人的に感じている理由は、
    とてもシンプルです。

    業者が、それぞれ「自分の城」の中で
    完結して生きてきたから
    です。

    ・商品情報
    ・価格
    ・取引条件
    ・納品方法

    これらはすべて、
    業者ごとに閉じた世界の中で管理されています。

    他の業者と比較される必要もなければ、
    協力する理由もない。

    結果として、
    店舗側は「紹介」や「慣れ」で
    取引先を選ぶしかありませんでした。


    城が大きくなるほど、コストは外に出る

    もう一つ、避けられない現実があります。

    業者の規模が大きくなればなるほど、

    ・人件費
    ・物流コスト
    ・管理コスト

    は確実に増えていきます。

    そして、そのコストは最終的に
    価格という形で、店舗側に転嫁される

    これは誰かが悪いわけではありません。
    資本主義の中では、極めて自然な構造です。

    問題は、
    その構造が「見えないまま」
    固定化されてきたことでした。


    もし、この構造を壊せるとしたら

    もし、

    ・各業者の強みだけを切り出せて
    ・情報が開かれ
    ・比較と分析が自動で行われる

    そんなプラットフォームがあれば、
    話はまったく変わります。

    業者は、
    「全部を抱える城」を大きくする必要がなくなり、

    店舗は、
    価格だけでなく、
    条件や強みを理解した上で選択できる。

    それは、
    店舗にとっても、
    業者にとっても、
    よりフェアな状態だと思っています。


    この考えは、
    最初からビジネスとして考えていたものではありません。

    自分の店を運営する中で、
    「なぜ、こんなに分からないまま
    お金を払い続けているのか」
    という違和感から生まれたものでした。

    今もこのフィールドノートでは、
    解決策を売りたいわけではありません。

    仕入れや流通の現場で感じてきた
    構造的な違和感を、
    そのまま言葉にして残しています。

    もしこの文章を読んで、
    「これは自分の店の話だ」と感じる部分があれば、
    それは決して特別なことではないと思っています。


    本記事は、KURUチームが
    実際の飲食店運営・流通現場での経験をもとに
    構造的な課題を整理したフィールドノートです。

  • Photo by Stephan Seeber on Pexels.com

    仕入れのことを何も把握できていなかったのか

    飲食店を実際に運営してみて、
    一番強く感じた違和感は「コストが高いこと」ではありませんでした。

    仕入れに関する情報が、まったく見えないこと。
    それが一番の問題でした。

    食材原価は、売上の30〜40%を占めます。
    これは多くの飲食店で共通していると思います。

    だからほとんどの店は、
    「有名だから」「隣の店が使っているから」
    そんな理由で業者を紹介してもらい、取引を始めます。

    肉、野菜、水産、調味料。
    一つの店舗で、5〜7社と取引するのは珍しくありません。
    自分の店も、まさにそうでした。


    ある日、ふとこんな疑問が浮かびました。

    「今使っているこのごま油、
    一番安く仕入れているのは、どこだっただろう?」

    すぐに答えが出ませんでした。

    同じメーカー、同じ商品なのに、
    納品書はすべて紙で、
    業者ごとにバラバラに届き、
    連絡手段も電話、LINE、FAXと分かれています。

    お金を払っている側なのに、
    自分が“何を、いくらで買っているのか”を
    一覧で把握できない。

    この構造そのものが、おかしいと感じました。


    野菜や水産は、さらに分かりづらい。

    毎日価格が変動します。
    それなりの金額を払っているにもかかわらず、

    • なぜ価格が上がったのか
    • なぜ下がったのか
    • 他の業者も同じ状況なのか

    それを知る術がありません。

    業者に電話をすると、こんな返事が返ってきます。

    「ニュース見てないの?
    燃料費が上がってるでしょ。円安でしょ。」

    では、他の業者もすべて同じかというと、そうでもない。
    この時、はっきり分かりました。

    これは価格の問題ではなく、
    情報が不透明すぎる問題だ。


    発注業務は、さらに深刻でした。

    1日に6社へ発注する。
    LINE、FAX、電話が混在する。

    その日に
    「どこに、何を、どれだけ発注したのか」は、
    翌日の納品書を見るまで分かりません。

    しかも、店には
    発注を担当するスタッフが4〜5人います。

    • 誰が
    • どの業者に
    • 何を発注したのか

    全体を把握している人は、誰もいません。

    売上の30〜40%を占める、
    最も重要な領域が、
    情報不足・アナログ・そして“信頼と勘”で回っている。

    正直、かなり異常な状態だと思いました。


    だから、こう考えるようになりました。

    「これは人の問題じゃない。
    構造の問題だ。」

    業者を100社、1000社並べて、
    価格を自動で比較できて、
    相場を一覧で確認できる。

    紙の納品書ではなく、電子で納品内容を確認できて
    発注・納品書・請求書が
    業者ごとに分断されず、
    一つの流れとして整理される仕組みがあれば。

    飲食店にとっても、
    業者にとっても、
    もっとフェアで、説明しやすい形になるはずだと。


    この考えを整理し始めたのが、2022年でした。

    最初から「サービスを作ろう」と
    思っていたわけではありません。

    目の前の店を運営する中で、
    このおかしな構造をどうにかしたかっただけです。

    そうして、現場で実際に使うことを前提に、
    開発者と一緒に試行錯誤を重ねてきました。

    今の KURU の構造は、
    その時の問題意識から生まれています。


    このフィールドノートは、
    KURUというサービスを説明するために
    書いているものではありません。

    飲食店を運営する中で、
    仕入れや流通の現場で感じてきた
    違和感や、うまくいかなかったこと、
    そして構造的におかしいと感じた点を
    そのまま記録しています。

    もし、この文章を読んで
    「これ、うちの店の状況と同じだ」と
    少しでも感じる部分があれば、
    それは決して珍しいことではないと思っています。